ホームズはいったん何かを決意すると、(ネィティブ)アメリカ・インディアンのようにまるで無表情になるので、現在の状態に満足しているのかどうか、外見からでは判断がつかなかった。

〈海軍条約文書 『シャーロック・ホームズの回想』
ハヤカワ文庫/大久保康雄訳〉より


事件捜査のさ中、今のところ新しい手がかりはないと話すホームズに、 様子をうかがうかのワトスンの独白。

原文は…

He had,when he so willed it,the utter immobility of countenance of a Red Indian,and I could not gather from his appearance whether he was satisfied or not with the position of the case.



Take3のセリフにて 『思っていることが顔にズバリ出ている』とホームズに指摘されたワトスン。
今回の独白は、そのお返しといったところをピックアップしてみました。
こういうところは真逆! 反対、対称といったところでしょうか、ホームズとワトスンのふたりは。

当たり前ですがホームズの考えてることなんか(特に大事な局面では)ワトスンにはさっぱりなワケなんですね。

事件の経過を気にするワトスンの興味を知りながら無表情を決め込む名探偵。そして全然違う話ではぐらかす。
しかし慣れたもので無表情になったホームズを前にひたすら待ちの体勢のワトスン。
こんな相棒に完全にお手上げかと思いきや、ワトスンは別の場面でこんなことも言ってます。

ホームズが口をつぐんで表情が読めない時は 『(事件の)手がかりをつかんでいるが、それが正しいのかどうか十分に確信できない場合なんだ』と。

考えている中身はわからなくても、ホームズの態度が何を示しているのかはちゃんと分かっているワトスン。
この辺の、相互理解の微妙〜なズレ具合が、実は逆にいい感じのパートナーシップを生んでいるのでは…?! と思うワケです。